■ 2024年 10月 ■
        2011年発行  寺報 「徳風」 より一部編集して転載
        聞きて:寺報「徳風」編集部
        話:若院

1、法事について
Q まず初めに法事の意義について教えてください。

 真宗における仏事はすべて死者の追善供養や慰霊や鎮魂のために行う行事ではなく、今の私たちの生き方や毎日の生活を振り返らせていただく大切な機会です。これを仏事・法事・法会(ほうえ)ともいいます。
人生における出会いは、私たちの分別を越えたはたらき(他力)によるものです。その”はたらき”を阿弥陀如来といい、亡き人は諸仏となって阿弥陀如来と出遇うチャンスを与えてくださるのです。 亡き人があってこそ、今の歩んでいる私です。亡き人のために私がするのではなく、亡き人の呼びかけに応じて勤めるのが法事です。


Q 法事は近親者が亡くなった場合にのみ行うものではないと聞いたことがありましたが、それはどういうことですか?

 法事と一口にいっても形式的には様々なものがあります。一般的によく行われる法事は葬儀や年忌などの場面をイメージすることが多いかと思いますが、実はそれだけではなく、もっとバラエティーに富んでいるものです。「法事」は仏のはたらきにあうことが願われている仏教行事ですので、朝夕のお勤めや葬儀も全て法事です。そのほかには仏前結婚式や初参式(お経いただき)やお内仏の入仏式も法事です。あえていうならば、法事はどなたが亡くなった時にのみ行うものとは限りません。

2、「七日つとめ」について

Q お葬式の後の「七日つとめ」に関してですが、「四十九日が三ヵ月にまたがる場合は三十五日で切り上げないと災いがおこる」などと聞きますが、これは本当なんでしょうか。

 3ヶ月にまたがるから災が起こるわけではありません。このような迷信に惑わされることなく、できる限り四十九日まで勤めましょう。しかし、家族や日程などの都合が合わない場合は五七日(三十五日)で切り上げることもやむを得ないでしょう。

3、年忌法事について

Q 命日の法要は亡くなった日に行わなければいけないものでしょうか。

 「命日を過ぎてしまったのですが、法事は行えますか」といった質問を受ける事があります。一般的に法事は命日より早い方が良いと言われているようですが、真宗の教えにその根拠はありません。日の良し悪しを気にすることよりも大切にしなければいけないことは、ここに生きている私が仏前に座って念仏申すことです。亡き人からの「南無阿弥陀仏と念仏申せ」と言う諸仏の呼びかけによって勤めるのが法事なのですから、そのことについて日の良し悪しを気にする必要はありません。

Q 亡父と母の7回忌と13回忌が同じ年の近い日になっていますが、二回も親戚に集まってもらうのも悪いなと思っています。そこで、まとめて法事を行うことは可能ですか。またその場合どちらの命日に合わせて行うのが良いのでしょうか

 かつての大家族制の時代とは違い、現代は核家族化の時代で家族や親戚が県外に住んでいるご家族が多いのも事実です。法事の度に集まって法事を行うのは確かに大変だろうと思います。出来るだけ多くの方に仏様の教えに触れる機会を大切に法事を行なわれているならば問題はないでしょう。また日取りは皆さんが集まりやすい日程で組まれた方がいいと思います。

Q では、「周忌」と「回忌」の違いを教えてください。

 年忌法事の基本的仕組みは「回忌」と「年忌」の二本立てになっています。「周忌命日」は、亡くなったその日のことです。「一周忌」は亡くなられてちょうど一年目の命日をいい、その次の年には3回忌が巡ってきます。回忌法事は周期法要の大きな節目として勤めます。地域によって勤める法事が違うことはありますが、3回忌以降は7回忌・13回忌・17回忌・25回忌・33回忌・50回忌と勤めます。その間は毎年祥月命日として勤めます。年忌法事の重要度としては回忌が最も重く、周忌(祥月)・月命日(月忌)も順に軽くなっていきます。

Q 毎年行う「祥月命日」はどのような心がけで行えばいいのですか。

 回忌法事の「お待ち受け」として出来るだけ勤めることが大事だと思います。正信偈と和讃のお勤めを家族でできるように日頃から準備されるのが好ましいと思います。

Q では、具体的な法事の内容について伺います。法事を行うのに持ち物は何を準備すればいいのですか。

 念珠(数珠)と勤行本。お持ちであれば「門徒肩衣」も用意してください。

<前日までに行なっておくこと>
●お内仏を掃除し整える。
●揃っていない仏具は購入し、備えてある仏具は全て磨いておく。
●お内仏に打敷をかける。
●家族揃って逮夜(前日の午後)のお勤めをしましょう。

<法要が始まるまでの主な準備>
●朝起きたら家族そろって勤行し、お内仏に「お仏飯」をお供えします。
●香(線香)を焚き、お参りされる方をお迎えします。
一年を振り返りますと、身の回りにはたくさんの記念日があります。命日は私たちにとって記念日の一つと言えるましょう。何の記念日かといいますと、死をもって生を考える記念日。つまり「いのちについて考える記念日」を命日といっていいだろうと思います。それは亡き人が私たちに与えて下さった気燕尾と言えるでしょう。